キャリアは、自分の夢や理想像などを中心に将来から考えるイメージが強いかもしれません。
ここでは、キャリア・アンカーという自分にとって大切な価値観からキャリアを考える理論についてみていきます。
キャリア・アンカーとは?
キャリア(生涯、職歴)のアンカー(船の錨)を指しています。
錨とは船が流されてしまわないように沈めておく、重りのことです。
キャリアも流されてしまわないように、自分なりのアンカー(錨)を大切にして、キャリアの意思決定をしていく考え方です。
What, How, Whyの考え方
キャリアの目標は、人生の前半ではわかりやすいWhat(何をするか)に偏ります。
子供のころ、「何になりたい?」と聞かれて、「専門性を活かせる仕事」、「リーダーシップを発揮できる仕事」と答えた人はいないと思います。
よほどの強いきっかけがある人は、そのままWhatを突き詰めますが、人によってはWhyやHowに移行します。
- 日本のプレゼンスを高めるために働く(Why)
- 好きな人と一緒に働く(How)
この中でのHowのアプローチをしているのが、この理論です。
シャイン博士
アメリカの心理学者で、もともと組織×心理学を研究していた人が、個人にも焦点を当てキャリアについても研究を始めたようです。
コンサルティングやキャリアカウンセリングなど、理論だけでなく、その理論を実践することに興味が強いようです。
なぜ注目されるのか?
キャリア・アンカーは、ほかのキャリア理論よりも圧倒的に知名度があります。なぜかを見ていきます。
- より柔軟だから
- わかりやすいから
より柔軟だから
「〇〇になりたい」というものは、ハードルが高いものもあります。
大企業のサラリーマンになりたいであれば、問題ありませんが、これが飛行機のパイロットやアナウンサーだとしたらハードルは上がります。
なれる人がそもそも少ないですし、競争率が大きく上がります。
これがたとえば、声を使う仕事をしたいということであれば、選択肢は広がります。
- 声優
- ラジオパーソナリティ
- コールセンター
- 企業の受付
- Youtuber
どうしてもなりたい場合には仕方がありませんが、分解してみると、ほかの方法が見つかるかもしれません。
就職活動の軸でも、価値観が使われることはあります。「○○業界の中で、人が魅力的」、「△△業界の中で、先進的」という場合には、後者には価値観が強く出るでしょう。
わかりやすいから
キャリア理論では、使いやすさも重要です。
キャリアを考えるのは大事ですが、誰もそのために一冊の本を読んでまで、理論を知りたいとは思いません。
自分も理論が好きで調べますが、「言ってることはわかるけど、自分で使おうと思ったり、人に勧めたりはできなそうだな」と思うことはよくあります。
その中で、あなたの大切な価値観に基づいて、考えましょうというのは非常にわかりやすいです。
将来のことを一生懸命考えたり、その将来像に向かうプランを考えたりする必要はありません。わかりやすく、使いやすいことが知名度の一因かと思います。
キャリア・アンカーの8つの分類
インタビューに基づいて、キャリア・アンカーを8種類に分類されています。
それぞれ、簡単に見ていきましょう。
- 専門・職能別
- 経営管理
- 自立・独立
- 保障・安定
- 起業家的創造性
- 奉仕・社会貢献
- 純粋な挑戦
- 生活様式
専門・職能別
専門家として活躍したいタイプです。いわゆるスペシャリストです。エンジニアでもマネジメントをするよりもコードを書いていたいという人はよくいますね。
経営管理
全般的な能力を身につけて、経営者として活躍したい人たちです。集団の中核としてリーダーシップを発揮していきたいタイプです。
昇進して、マネジメント業務に移っていくことに魅力を感じます。
自立・独立
自分なりのやり方で進めるのが好きな人たちです。会社内ではあまりうまくいかないタイプです。
今では、フリーランスになる人が多そうです。
保障・安定
将来が予想できて、安心して働くことが好きな人たちです。公務員タイプですね。
今では、どの会社でも安心ではありませんが、銀行、商社あたりはしばらく安泰そうです。
起業家的創造性
新しいことをやりたいという人たちです。起業家はここですね。
社内企業や副業としての起業やここの部分の選択肢も広がっています。
奉仕・社会貢献
社会問題を解決したり、医療・福祉・介護系の仕事に就く人に多いタイプです。
NPOやソーシャルアントレプレナーなど、特定の社会問題を解決する人もいます。
純粋な挑戦
起業家の人にも多そうですが、それ以外でも登山家やスポーツ選手などもここに入る人がいそうです。
トライアスロンや筋トレを極めようとしている人たちもここに入るのではないでしょうか。
生活様式
今でいうと、ワークライフバランスを大切にする人ですね。
週休3日で働く人もいたり、自宅で働くひともいたり、かなり柔軟になってきている印象です。
キャリア・アンカーの診断
ある程度の社会人経験がある人であれば、上のタイプを眺めれば、だいたい自分がどれに当てはまるかわかるでしょう。
そうでない人向けに、診断方法と具体例について見ていきます。
診断方法
1.友人・同僚に聞く
一緒に働いた友人や同僚に、自分が上のどれに当てはまりそうかを聞いてみましょう。
2.本を読む
キャリア・アンカーの本でも質問表が用意されていて、答えていくことで自分のタイプがわかります。
ボリュームもさほど多くないので、読みやすいです。
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3.オンラインで診断
40個の質問に答えると、診断結果がわかるサイトがあります。
多少の時間はかかりますが、こうしたものも使ってみてもいいでしょう。
やってみましたが、どの質問でどの要素を聞いているかがわかるので、自分で考えたものとだいたい一致するかと思います。
具体例
自分の場合には、こんな考えで転職したことがあります。
- What:事業立ち上げとマネジメントをしたい
- How:口出しはして欲しくない、たくさん働いてもOK、業務はチャレンジングでOK
- キャリア・アンカー
- 経営管理:★★★
- 自立・独立:★★
- 起業家的創造性:★
- 純粋な挑戦:★
- キャリア・アンカー
入社したのは、クラウドソーシングの会社でしたが、そこから無事マネジメントをしたり、プロジェクトをしたり、好きに任せてもらったりしました。
このときは、25~26歳くらいだったかと思います。新卒のときにはこうした価値観はあまり明確にはなかったので、やはり最低限の社会人経験がないと難しいかもしれません。
さらに知っておきたいこと
ほかにもキャリアや転職について書いているので、ぜひこちらもどうぞ。知識が増えると、選択肢が広がります。