キャリアの考え方というと、目標を決めて、そこまでのプランを立てて、進んでいくイメージがあるかもしれません。
実はキャリア理論にもさまざまなものがあり、必ずしもそのような目標に向かって一直線のものだけではありません。
ここでは、「偶然を活かしてキャリアを形成していく」というクランボルツ教授の理論を見ていきます。
目次
計画的偶発性理論とは?
偶然なのに計画するという矛盾した言葉で、イメージが掴みづらいかもしれません。
英語ではこのような意味です。
- planned(計画された)
- happenstance (偶然のできごと)
- theory(理論)
「偶然のできごと」を「呼び込んだり、活用したりすること」でキャリアを形成していこうという考え方です。
キャリアの8割程度は偶然に左右されるので、計画を綿密に立てたり、それにこだわるよりも柔軟に考えるのが重要だということです。
『その幸運は偶然ではないんです!』という本でも具体例を交えて説明していますが、冒頭にこのように書かれています。
結果がわからないときでも、行動を起こして新しいチャンスを切り開くこと、偶然の出来事を活用すること、選択肢を常にオープンにしておくこと、そして人生に起きることを最大限に活用することです。
リクルートでも 「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」と昔の社訓にありましたが、それにも非常に近いですね。
クランボルツ教授
スタンフォード大学の教授です。公演も行っており、日本にも来て慶応大学などでも公演を行ったようです。
スタンフォード大学の公式ページによると、名誉教授となっています。Stanford – John Krumboltz
社会的学習理論という人間は社会的に学習したプロセスの結果として、職業選択をする考え方を発展させ、これをキャリアの意思決定やキャリアカウンセリングの手法に応用しています。
なぜ注目されたのか?
この理論が注目された背景はいくつか考えられます。簡単に見ていきましょう。
- 旧来的な価値観よりも実態に近い
- 未来の予想がどんどん難しくなる
- 誰にでも簡単に活用できる
より実態に近い
旧来的なキャリアの考え方と偶発性理論を比べたものが下の図です。
左のようなキャリア観は、わかりやすいです。
- 明確な目標を立てて、
- その目標に向かって必要な経験・スキル・学習などを計画して、
- その計画に沿って、キャリアを進めていく
というものです。野球選手のイチローさんやお笑い芸人のさんまさんはこのパターンでしょう。
一貫性があって、昔からの夢を達成してかっこいいですね。
でも、周りにこういう人はあまりいないのではないでしょうか?
予定外のできごとでキャリアを変えざるをえなかったり、単純に気が変わったりして、頻繁に変わった人もいるのではないでしょうか。
ずっと明確なキャリアビジョンがある人は、当初から目指していたものに向かって、努力して成果を上げているので、注目もされます。
一方で、実態と乖離している感じがあります。そうした中で、より実感に合うようなものだという点から受け入れやすかったのでしょう。
みなさんも、このような経験はあるのではないでしょうか。
- なんとなく興味を持った学部を受験した
- たまたま内定した会社に入社した
- たまたま担当した業務が非常に楽しくて、その職業をずっと続けた
- 友人に言われた何気ない一言でキャリアを変えた
未来に予想が難しい
技術の発展もあり、世の中の変化のスピードはどんどん速くなっています。キャリアにも大きな影響を与えます。
たとえば、自分の経験した職種の一部ですが、これらの職業は20年前にはなかったものです。仮にあっても業務内容は数年もあれば、がらっと変わります。
- EC系のコンサルタント
- クラウドソーシングのディレクター
- SEOのコンサル
たぶん、次の20年ではまったく違う職業が誕生しているでしょう。
新規事業をやるとわかりますが、当初の予定通りに進むことはほとんどありません。人生も自分では、コントロールできないものはたくさんあるでしょう。
そうすると、自分のプランにこだわるよりも、そうした偶然をプラスに変えていくことが重要だとわかります。
誰にでも簡単にできる
目標を立てて、その達成のために行動するというのは、簡単なようで難しいことです。
「やりたいことがない」という人も多いです。周りに言われて無理やり目標を作っても本人に納得感がなければ、意味がありません。
この理論のいいところは誰でも比較的、簡単にできるということです。
詳しくは下で具体的な行動を見ていきますが、具体的な目標がない人でも、今どんな環境にいる人でも始められます。
そうしたハードルの低さも、受け入れられやすい一因になっているでしょう。
具体的に何をすればいいのか?
では、具体的にどうすればいいのでしょうか。このような行動指針を持つことが重要だと指摘されています。
- 好奇心…いろいろなことに興味を持つ
- 持続性…簡単にあきらめない
- 柔軟性…柔軟にチャンスを活かす
- 楽観性…前向きに取り組む
- 冒険心…結果がわからなくても、行動を起こす
抽象的に思えるかもしれませんが、本の中では具体例がたくさん紹介されています。
ここの事例がありがちな非常に特殊な例ではなく、ハードルの低いものになっていて参考にしやすいです。
どのような態度や行動を指すのかを知りたい方はぜひ本を読んでみてください。
最近、ホリエモンが出版した本もかなり近いことを言っているように思います。
行動のハードルが下がったり、行動しないリスクが高まっていることから想定的に行動するメリットが増しているのではないでしょうか。
自分の例
自分のキャリアが偶然に左右されたと思った経験をいくつか挙げます。
- 子供のころ、海外に住んでいた⇒海外に興味をもつように
- たまたま、大学でビラを見つけた⇒学生団体や海外インターンに行ったり
- たまたま、前職でやっていた⇒メディアのビジネスをやるようになった
最終的に自分で考えたように思うことも、自分の行動によって最終的に行きつくものも多いかも知れません。
さらに知っておきたいこと
ほかにもキャリアや転職について書いているので、ぜひこちらもどうぞ。知識が増えると、選択肢が広がります。