「現代は、主体的なキャリア形成が重要です」というようなフレーズを見たことがありませんか?
このキャリア形成というのは、キャリアビジョン、キャリアデザイン、キャリアプランなどと、どう違うのでしょうか。
ここでは、キャリア形成が具体的に何を指すのか、実際にそのキャリア形成はどのように進めればいいのかをご説明します。
目次
キャリア形成とは何か?意味と違い
キャリアを作っていくことです。キャリア構築、キャリアを積むといった言葉もほとんど意味です。
キャリアは生涯だったり、職歴だったりを意味するので、実際は勝手に積み上がっていきます。
よく主体的という言葉とセットで説明されるのは、この勝手に積み上がっていくキャリアのことを能動的に考えていこうという背景からです。
ただ、そうなるとキャリアデザインといった言葉やキャリアプランという言葉と似ているようにも思えます。その違いも見ていきます。
他の言葉との違い
無理やり1つの図にまとめました。基本的にキャリア系のワードは、現状と目標を結ぶ間を説明するものです。
キャリア形成に近いものとしては、キャリアデザインやキャリアプランですが、こうしたものはあくまでも
- 計画すること(キャリアデザイン)
- 計画したもの(キャリアプラン)
を指していて、
- 計画したものを実行していくこと(キャリア形成)
とは別のものを指すことがわかります。
キャリア系ワードの使い方の事例
- 事業部長を目指して、(キャリアビジョン)
- 現状の営業のリーダーから事業部長までの道筋を描いて、(キャリアデザイン)
- 営業リーダー⇒営業マネージャー⇒事業部長という計画を作り、(キャリアプラン)
- 営業リーダー⇒営業マネージャーは今の会社で進め、(キャリアパス)
- チームの成果を上げるために、スキルや経験を習得していく(キャリア形成)
厳密に言葉を使い分けるとこんな感じになります。
なぜ重要になったのか?
昔は会社のキャリアパスがすべてだった
キャリア論はそもそも1900年代のはじめの方に生まれた、学問としても新しい領域のものです。
日本の場合には、終身雇用や年功序列という独特の制度があったため、キャリアに関してはあまり議論されていませんでした。
「新卒で入った会社で頑張り、昇進する」という考えが一般的で、会社で用意されているキャリアパスがすべてでした。
そのキャリアパスが個人にとってのキャリアプランで、キャリア上の目標はその会社内でのできる限りの昇進というレベルです。
個人は、会社のキャリアパスにしたがうくらいで、自らがキャリアについて考える必要がありませんでした。
キャリアの多様化
終身雇用は今でも残っていますが、成果主義、実力主義が導入されたり、大手企業でもリストラがあったりと環境が変わりました。
また、非正規雇用と呼ばれる契約社員やアルバイトなどの働き方をする人も増えたため、キャリア形成を会社任せにすることへのリスクが認識されました。
キャリア形成を自ら考えることが重要だという認識が広まり、大学でもキャリアに関する授業があったり、法政大学のようにキャリアデザイン学部という学部まで作られるところもあります。
具体的にどう考えるのか?
キャリアの考え方はさまざまあります。ここでは、目標を設定してそれに向かっていくという一般的なアプローチのものを簡単にご紹介します。
- 目標を設定する
- 目標までの道を書く
- それに向かって進み、定期的に振り返る
- また道を書き直して、進む
目標を設定する
夢という言葉が使われることもありますが、将来的に自分はこうなりたいというものを設定します。
子供のころのように、電車の運転手や消防士といった職種でも構いませんし、それ以外のものでも構いません。
いくつか例を挙げます。
- 会社の中で昇進していき、役員になる
- 歌手として、東京ドームをファンで埋め尽くす
- フリーランスとして、海外で生活しながら稼ぐ
- Youtuberとして、何百万人にも見られる動画を作る
30代になっても毎日変わるのは問題ですが、若いうちはしょっちゅう変わることもあります。
見つからないうちはとにかく行動量を増やしていき、少しでも興味あるものを探していきましょう。
ちなみに、目標の設定が難しい場合には、目標設定以外のアプローチもあります。こちらでも詳しく説明しています。
参考:キャリアビジョンとは?具体例で考え方・書き方を学ぶ!転職面接・事務職にも対応
目標までの道を書く
現状の自分がどのようにその目標に向かって進んでいくかを考えます。
たとえば、このようなアプローチがあります。簡単に見ていきます。
- すでに同じようなことをしている人を分析する
- 小さく試してみる
- その目標に必要な能力を分解して、身につける
すでに同じことをしている人を探す
一番、シンプルな方法でこれです。ロールモデル、キャリアモデルなどと呼ばれることもありますが、やっている人を分析するのは確実なアプローチの1つです。
一方で、注意が必要なのはその人の過去を見ていったときに、時代背景が大きく異なることがありえます。
今、50代の人であればその人は30年以上前のインターネットがない時代に働きはじめた人たちです。
よくあるのが、当時はマイナーだった業界にいた経歴の人を見て、その人を追いかけようとしたときにその業界はすでに成熟しているようなパターンもあります。
時代背景も含めて考える必要があります。
小さく試してみる
前例があまりないような分野で勝負する際には、参考になる人もいないので、自分で切り開く必要があります。
もっとも早いのは、新しいことをどんどん試してしまう方法です。行動をしていると、どんどん精度の高い方法がわかってきます。
加えて、SNSなどで見つかりやすい時代になったので、ちゃんと発信しておけば、有識者からアドバイスをもらえる機会も多いです。
わからないことは試してしまったほうが早いです。
必要な要素を分解して、身につける
これもオーソドックスなアプローチですが、実際にやっている人にコンタクトを取りやすかったり、試しやすかったりする世の中では優先順位が下がりました。
「社長になるために、営業・マーケティングでビジネスの基礎を学び、マネジメント力を鍛えて、会計・財務を勉強します。」というのは、なんとなくよさそうに見えますが、実態と乖離することも多いです。
実際に起業すると、幅広く能力を持っている人ばかりではないことがわかりますし、大企業で社長になるにも能力以外のさまざまな要因で決まることは働いている人であればわかるでしょう。
経験者へのヒアリングをもとに、必要な能力を見つけたり、実際にやってみて気づいたスキルを身につけたりと、他の要素と組み合わせられるといいですね。
進み、定期的に振り返る
プラン通りに行くことはほとんどありません。プランは仮説だと考えて、どんどんアップデートしていくのが重要です。
企業も個人もよくある失敗パターンは、振り返りをしっかりしないことです。
キャリアの場合には、年齢が上がるほど取れる選択肢はどんどん減っていきます。早い段階で修正すれば、対応できることも年齢が上がると難しくなることは多いです。
1年に1回でも、なんかのタイミングでも定期的に振り返る仕組みを準備しておくのを勧めます。
書き直し、また進む
振り返りを踏まえて、また現状から目標までの道筋を考えます。この繰り返しです。
目標が変わった際にも同じように考え直します。やっていくと、どんどん精度が上がっていきます。
キャリアに完成形はない
キャリアは、予期しないできごとの影響も大きく受けます。
10日後の天気予報すらわからないのに、3年後の自分がわかるというのも難しいです。
また、当初の予定通りに進むのが、必ずしもベストとは限りません。もっと柔軟に考えておきましょう。
キャリアは継続的にアップデートしていく感覚でいると、精神的にも安定するのでおすすめです。
さらに知っておきたいこと
ほかにもキャリアや転職に関する記事を書いています。こちらもあわせてどうぞ。