営業をしたことがある人であれば、本を読んで営業ができるようになる人はほとんどいないことは知っていると思います。
本と営業はあまり関係がありません。というかもともと営業と座学は非常に相性が悪いです。
営業ができる人が知識を得るために、営業に関わず、ビジネス関係の本を読むことはありますが、営業とはあまり関係がありません。
同様に資格も関係ありません。こちらは営業だけに限ると、もっと無駄です。
ここでは、なぜ本や資格が営業には意味がないのか、代わりに身につけたいスキルに関して解説します。
目次
なぜ営業に本は必要ないのか?
営業と本の相性の悪さ
営業と本は相性が悪いです。それは、営業が実践的にしか学べない要素が多いからです。座学が難しいものです。
たとえるなら、水泳を教室で勉強する感覚に似ています。体の動きを本で理解することはできるかもしれませんが、本で読んだからといって泳げるわけではないでしょう。
実際、大学の商学部・経営学部やMBAなどでも営業の授業はほとんどありません。
マネジメントも営業に近いですね。経営でも組織論や戦略論などは学びますが、マネジメントやリーダーシップはあまり授業に向いていません。
大学であれば、体育会やサークル、社会人であればチームやプロジェクトのリーダーなどで学ぶものです。
「営業」の多様さ
営業本といってもそもそも営業というのは多様です。
既存向け・新規向けもありますし、個人向け・法人向け、有形材・無形材と幅広いです。それをまとめるのにはやはり無理があります。
法人向け営業について勉強しようとしたら、個人向けの訪問営業ということがありました。
参考:営業職とはどんな仕事?営業職の種類を向き・不向きとあわせて解説します
営業本の質の低さ
上とも関連しますが、営業本の質にも問題があります。
営業本の多くは、「俺はこうやってうまくいった」というものです。それは、分けると特定の顧客・特定の商品・特定の手法でうまくいったということです。
すべて無駄とはいいませんが、かなり限定的な状況でうまくいっていることやたまたまではないかといったことは検証されていないことがほとんどです。
役に立つのはビジネス本
営業全体にとって役に立つ知識とは、顧客を知る、売っているサービスを知る、行動量を増やす、いろいろ試してPDCAを回すといったものです。
これは営業に役立つというよりビジネスパーソンに普遍的に役立つものでしょう。人事でも応募者を想定して、媒体を選びますし、合っていなければ、ライティングや媒体を変えるでしょう。
こうした前提で自分が読んでよかったと思ったものがあります。営業に役立つというよりは、広くビジネスに役立つものを何冊か紹介します。
人を動かす
ビジネスマンどころか、人と関わるすべての人におすすめできる一冊です。定期的に読み直しますが、そのたびに発見があり、いい本の典型だと思います。
エピソードが中心なので、本としては非常に読みやすいです。
書評:人間関係を改善したい全ての人へ『人を動かす』デール・カーネギー
影響力の武器
扱うテーマは人を動かすにも近いですが、こちらはそれぞれ根拠が提示されていて、アカデミックな側面もある本です。
すぐに実践で使えるという近さはありませんが、あらためてセールスの手法やその背後にある心理を考え直すにはいい本です。
鬼速PDCA
個人的にですが、営業はPDCAを回していけばある程度、どんな人でもできるようになると思っています。
最初からできる人もいますが、最初はイマイチでも成果が上がるようになった人はたくさんいました。
もともと営業の人で、少し前に上場した富田さんという人が書いたPDCAや営業の本があります。
これを読んで、できるわけではありませんが、再現性のあるアプローチだと思うのでこちらも興味があればどうぞ。
『営業 野村證券伝説の営業マンの「仮説思考」とノウハウのすべて』をAmazonで見る
営業に資格は必要ないのか?
あなたは、サービスを購入するときに相手の資格を気にしたことはありますか?
営業の中には、証券会社の営業における外務員や不動産営業における宅建など、職業に密接したものがあります。
こうしたものは必要です。また、資格ではありませんが、免許は会社によっては必要でしょう。
これ以外の資格は、個人として取るのは構いませんが、業務上は役に立ちません。
基本情報技術者、簿記、TOEICなどが営業におすすめの資格に挙げられることもありますが、必要はありません。
英語の基準でなぜかTOEICが使われることもありますが、TOEICはスピーキングやライティングのテストもないので、実践的な場面ではほとんど役に立ちません。
営業で成果を上げたいのであれば、資格を取らずに今いる場所で結果を出せるように工夫するかさっさと異動や転職をした方がいいでしょう。
営業にスキルは必要か?
営業の種類ごとに多様なスキルがある
一口に営業といってもあまりに多様で、すべての営業に当てはまるようなスキルはほとんどないでしょう。
漫然と営業に必要なスキルを身につけたいと考えるのはあまり得策ではないでしょう。
別の記事で営業の種類ごとに必要な要素をまとめたので、その情報をまとめました。
参考:営業職とはどんな仕事?営業職の種類を向き・不向きとあわせて解説します
営業ごとに必要なもの
- 個人:人当たりのいい人で、誰とでもコミュニケーションを取れる
- 中小企業:人当たりのいい人で、論理的に提案ができる
- 大企業:話し方やマナーがしっかりしている人で、論理的に提案ができる
- 定型:元気・メンタル・行動力
- 非定型:戦略・柔軟性・人脈
- 訪問・飛び込み営業:気合い・元気・行動力
- 電話営業:気合い・元気・行動力
- 人脈営業:人脈・行動力
- インバウンド営業:知識・ヒアリング・論理性・提案力
- 既存顧客への営業:知識・ヒアリング・論理性・提案力
こうやって見ると、元気やメンタルが重要なものもあれば、戦略や論理性が求められるものもあります。
まず、あなたがしたほうがいいのは、あなたの営業にはなんのスキルが必要かを明確化することです。
会社で結果を出している人を研究
あなたの顧客や商材などからどのようなタイプの営業かを考えるのもいいですが、もっとも早いのはすでに結果を出している人を見ることです。
早い段階で結果を出している人に同行をしたり、ランチに行って質問攻めにしたりしましょう。
営業は極めて明確に結果が出る職種です。結果を出していない人と出している人は明確にわかります。
結果を出していない人はどうすれば結果を出せるかがわかっていません。それがわかっている人を研究します。
商品がいいから工夫をせずにひたすら行動するといいのか、ニッチだから特定ターゲットに絞っているのか、その場ですぐに決めてもらうのが重要なのかなどの勝ちパターンを明確にします。
ここであなたにどんなスキルが必要かわかります。そのスキルを強化しましょう。
そもそも営業にスキルはいるのか?
分析をした結果、元気にたくさん飛び込むことが重要だとわかったとします。果たしてこれはスキルでしょうか?
精神力、行動力、ポジティブ力、結果にこだわる力などと言い換えても、一般的なスキルとは違うかもしれません。
ほかにもコミュニケーション能力、ヒアリング力、提案力など営業の能力はどうにも測りにくく、客観的に説明しにくいものも多いです。
エンジニアだったらプログラミング能力、マーケティングであれば、定量分析や広告運用など説明しやすいものがあります。
ここが営業の辛いところですが、営業は結果がすべてです。スキルはあるんですが、結果は出せませんでしたという営業の人をあなたは信用できるでしょうか?
個人的には、営業にもスキルはある。ただ、説明しにくいものなので、結果を出すほかないと考えています。
営業のキャリアで必要なもの
ここまで読んできた方であれば、それが本でも資格でもスキルでもないことはわかるでしょう。
営業にとって重要なものは実績と経験です。この2つがあなたのキャリアを守り、成長させる土台となります。
ポイントはこの2つです。
- できるだけ早く実績を出すこと(~30歳)
- 実績を活用して、経験を積むこと(~35歳)
実績を出す
まず、何かしらの実績を出しましょう。幸い、営業はあらゆる要素が数字になります。
新規顧客獲得、既存顧客の売上向上、製品Aの売上、Bエリアの売上、チーム内の売上シェアなどさまざまです。
正直、2年程度、一生懸命やれば誰が見ても(一見)すごいような成果は挙げられます。たとえば、リクルート出身で営業をしてMVPを取ったという人をなぜか大量に見ます。
MVPもエリア別、部署別、月間、年間などさまざまですし、どちらかというと政治的な動きの影響もあるので、比較的取りやすいでしょう。
経験を積む
通常の営業経験では弱いです。そもそも営業は無数にいます。
会社で一般的な営業で結果を出すと、だいたい次のステージがあります。
営業のチームリーダー、新規事業の営業、アライアンス営業、営業企画、海外営業などです。
早めにこの段階に行きましょう。35歳で4~5人の部下がいることは普通ですが、ベンチャーではそれが23歳でも可能です。
海外営業などもいいでしょう。多くの会社では海外要員がおらず、中途で経験者を雇います。
営業職のキャリアを変えるタイミングと注意
では、実績や経験が得られたらどうするのがいいでしょうか。逆に、実績がないときはどうすればいいのでしょうか。
ここで、営業のキャリアでの転職タイミングも比較的わかりやすいです。パターン別に見ていきます。
- 交渉力が強いとき
- キャリアチェンジをしたいとき
- 実績がないとき
交渉力が強いとき
実績や経験があって交渉力が強いときには焦る必要はありません。
少し長めの時間がかかっても働きながら最適な求人を待ちましょう。
たとえば、数人のマネジメント経験を得てから1~2年働いたり、海外経験を得た後などはそれよりも選択肢が広がっているのでいいでしょう。
社内での仕事での成長が止まったり、昇進が難しそうだったりするときには転職のチャンスです。
キャリアチェンジをしたいとき
キャリアチェンジをしたいときは、早めの意思決定が重要です。
20代であればなんとでもなります。このときも実績は欲しいですが、どうしてもないようであれば仕方がないでしょう。
営業はスキルも汎用的なので、結果にこだわる、実行力、行動力、コミュニケーション力など自己PRもしやすいです。
実績がないとき
あなたの年齢や転職希望の会社や職種にもよりますが、実績がないときには作ったほうがいいです。
営業にもさまざまな種類があるので、向き・不向きもありますし、自分の配属によっては成果を出しにくいこともあるかもしれません。
キャリアチェンジの場合には、仕方ない面もありますが、営業職を続けるので、あれば最低限の実績は欲しいところです。
また、20代を過ぎている場合にも実績がないとなかなか厳しいです。営業職で求人がないことはありませんが、あなたの状況次第で質は大きく変わります。
転職の成功確率を上げる
営業のいいところは、営業のいない会社はほとんどないということです。GoogleやFacebookのような非常にインターネット的に見える会社でも、広告営業がいます。
営業から営業以外に移るときにも自己PRは楽です。スキルは汎用的ですし、実績は客観的に説明できます。
迷ったら目標達成、結果にこだわる、PDCAを回すなどを軸に実績や工夫した点を説明すればいいでしょう。
営業職での転職の落とし穴は、油断するとブラック企業も結構あることです。いざ入ってみたら業務内容や給料が聞いていた話と全然違うというのはよくあります。
自分の前に所属した会社でも半年で半分ほど退職した実績があったこともあり、他人事ではありません。
転職を考える人は、リクナビNEXTなどの転職サイトを活用してもいいですが、ちゃんと調べないとそういった会社に当たる可能性もあります。
そもそも転職は多くの人が不慣れです。自分の力だけで進めようとすると、このように思わぬ落とし穴にハマる可能性もあります。
自分も3回転職していますが、慣れているかというと、あまり自信はありません。
転職エージェントに相談する
個人的には、転職のプロの転職エージェントに相談することを強くお勧めします。
転職エージェントは担当者によっても質はさまざまですが、彼らは毎日多くの人をサポートしています。
転職をせいぜい数回しか経験していないあなたの何十倍も転職に向き合っています。
僕自身も転職するときには必ずエージェントに相談します。
それは、彼らしか持っていない情報や彼らしかできないサポートがたくさんあるからです。
- 転職の進め方
- 該当業界・業種の求人状況
- 自分の市場価値・アピールポイント
- 自分の希望に合った求人
- 行きたい会社に内定する可能性
- 書類・面接対策のアドバイス
あなたに合った求人を探すだけでなく、あなたの市場価値を教えてくれたり、特定の会社の選考対策までしてくれたりと万全のサポートです。
求人を探すだけであれば、転職サイトでも口コミサイトでもいいでしょう。でも肝心のアドバイスがもらえるサービスはほかにありません。
確実に成功させるためにも転職のプロのアドバイスを絶対に受けたほうがいいです。おすすめの転職エージェントを下に紹介します。
並行して転職サイトやそのほかの転職サービスを使うのは問題ありませんが、転職エージェントには必ず登録しましょう。
いくつか相談をしたうえで、気の合うエージェントの人と転職活動を進めていきましょう。
営業職は実績と経験が大事です。本や資格やスキルなどは考えすぎず、まず結果を出せるようにしましょう。