皆さんは、キャリアについて考えたことがありますか。
多くの人は就活のタイミングや転職のタイミングで考えるのではないでしょうか。
僕は大学のときに、キャリアデザイン委員会という非常に怪しい団体で、Careeeer(eがいくつかは忘れました)という非常に怪しい名前のフリーペーパーを作りました。
商社・銀行・メーカーの人だけでなく、石原慎太郎さんや紀里谷さんにもインタビューしました。
明確な目的もなく、画一的に人気企業に応募したり、入社したりすることの違和感からでした。
そこで、キャリアには理論があったり、考え方がいくつかあったことを知ります。
このページを読んでいる方は少なからず、キャリアに興味があるでしょう。
- 自分のキャリアについて考えたい
- キャリアに関連する言葉の意味が知りたい
- キャリア理論、考え方を知りたい
という方はぜひ読んでみてください。目次から興味のあるところに直接、移動できます。
キャリアって何?キャリアの定義
まず簡単に、キャリアという言葉をみていきます。
世間一般でキャリアと言われたときには、職歴・業務歴を指すことが多いです。
この人はどういうキャリアなのか?
と考えると、新卒で〇〇という会社に勤めて3年間、法人向けのマーケティングに携わり、転職して○○という会社で…というイメージですね。
新卒採用に対して、中途採用という言葉が使われますが、同じ意味でキャリア採用(すでに経験がある人の採用)という言葉も使われます。
ちなみに、厚生労働省のキャリアの定義はこのようになっています。
「キャリア」とは、過去から将来の長期にわたる職務経験やこれに伴う計画的な能力開発の連鎖を指すものです。「職業生涯」や「職務経歴」などと訳されます。(出典:「キャリアとは」厚生労働省キャリアコンサルティング)
他にもいくつかキャリアという言葉が使われる場面があります。
国家公務員におけるキャリア
国家公務員はキャリア・ノンキャリアといわれる人がいます。
キャリアは、国家公務員採用 総合職 試験(旧国家公務員I種試験)を合格しており、ノンキャリアは、国家公務員採用 一般職 試験(旧国家公務員II種試験)を合格しています。
たかが試験と思うかもしれませんが、どちらに所属するかで出世や年収がまったく異なります。
テレビでよく見る事務次官などは、そのキャリアの中でもトップで年収3,000万円にもなります。
ここでのキャリアはどちらも経験がないはずなのですが、キャリアが保証されている、キャリアの道が整備されているといった意味なのでしょうか。
映画が好きな方は、踊る大捜査線の青島(織田裕二)がノンキャリア組で、室井さん(柳葉敏郎)がキャリア組です。
通信キャリア
ちなみに、キャリアというカタカナは、通信キャリアなどを指すこともあります。
日本語だと同じですが、英語だと全く別のcarrier(通信キャリア)とcareer(経歴・職業)で字が違うので注意しましょう。
生き方としてのキャリア
個人的には、キャリア=生き方が一番しっくりきます。広義のキャリアを生き方、狭義のキャリアを経歴ということが多いです。
政府でも働き方改革と掲げて、働き方を柔軟にしようと考えていますが、仕事だけを考えても結婚や出産などの影響は避けられないですよね。
今日から使えるキャリア理論
時代によって私たちの生き方や生活はがらっと変わりますし、個別事情が非常に大きいものです。
それでもアプローチはさまざまあり、理論化されているものもあります。
ここでは、有名なものや使いやすいものについて簡単にご紹介します。
キャリア・アンカー理論(シャイン)
エドガー・H・シャインさんの提唱した概念で、キャリア・アンカーというものがあります。
アンカーというのは船の錨(いかり)のことです。
船が錨がないと波で流されてしまうように、キャリアにおいても自分の拠り所の判断基準を明確に意識することが重要だという考え方です。
就活のときにも自己分析で自分の価値観を明確にしようといったことが言われたりしますね。
以下の8つのタイプに別れて紹介されています。
あなたのもっとも大切な価値観はなんでしょうか?
- 専門・職能別コンピタンス(専門性の高い仕事が好き)
- 全般管理コンピタンス(マネジメントが好き)
- 自律・独立(自分なりが大事)
- 保障・安定(安全でいたい)
- 起業家的創造性(新しいことが好き)
- 奉仕・社会貢献(世の中をよくしたい)
- 純粋な挑戦(挑戦したい)
- 生活様式(バランスよく生きたい)
さらに知りたい方は本もありますので、参考にしてください。
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ライフキャリアレインボー(スーパー)
ドナルド・E・スーパーの理論です。
スーパーはいわゆる広義のキャリアとして生き方を対象としており、生き方を理解するうえで、人生の段階と役割に注目しています。
- ライフステージ(人生の段階)
- ライフロール(人生の役割)
ライフステージとは、成長段階・探索段階(合った仕事を探索する)・確立段階(専門性を高める)・維持段階・衰退段階の5つ分かれています。
ライフロールは、子ども・学生・職業人・配偶者・親・家庭人・市民・余暇人の8つに分かれています。
図示するとこのような形になります。
1950年代の理論なので、そのまま使えるかというと悩ましいですが、いくつかの視点で自分のキャリアを分析する点は興味深いですね。
ややマニアックな内容ですが、こちらも本があります。
計画された偶発性理論(クランボルツ)
一般的にキャリアデザイン・キャリアプランというと、目標を決めてそれに向けて最短で進んでいくというイメージがあるかもしれません。
でも、実際には計画できないことも多いです。お笑い芸人のさんまさんや野球選手のイチローさんのような人は珍しいです。
この理論では、キャリアの8割は予想できない偶然に依存するため、そういった偶然を活かせるための態度を示しています。
- 好奇心…いろいろなことに興味・関心を持つ
- 持続性…失敗しても継続する
- 楽観性…ポジティブにとらえる
- 柔軟性…固執しすぎずに、柔軟でいる
- 冒険心…失敗を恐れずに挑戦する
理論としてわかりやすいため、ほかのものよりは知名度が比較的高い印象です。
自分も昔読んで、こんな柔軟な考え方もあるんだなと思いました。かなり読みやすいです。
トランジション(ブリッジス)
人生の転機に注目したキャリア理論です。
トランジションとは、過渡期という意味で、何かが終わり、新しい何かが始まるまでの過程を指しています。
終わり⇒ニュートラルゾーン⇒始まり という3段階に転機を分けて、いかにその過渡期を乗り切っていくのかということに着目しています。
転職のときにこの本を読みましたが、心が楽になったのでおすすめです。
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キャリアドリフト(金井壽宏)
神戸大学教授の金井壽宏教授が提唱している考え方です。この人の書籍を何冊読んだことがあるので紹介します。
キャリアのすべてを計画するのは難しいため、キャリアをデザインするだけでなく、キャリアをドリフト(漂流する)することも重要だという考え方です。
キャリアデザインは予定通りに行かないので、節目のタイミングでだけ考えて、それ以外はそこまで気にしないでいいということです。
トランジション理論や計画された偶発性理論に近い部分があります。
個人的に結構好きな考え方です。無料で読める論文もあるので、興味がある方はどうぞ。
論文:キャリア・トランジション論の展開:節目のキャリア・デザインの理論的・実践的基礎
自分が最初に読んだ本はこちらでした。もともと専門はリーダーシップや経営学のようです。
リーダーになりたい人やリーダーと呼ばれる人のことを知りたい方にはよい本です。
『リーダーシップの旅 見えないものを見る』をAmazonで見る
キャリア用語の整理
具体的なキャリアの考え方の前に、キャリア関連の言葉を少し補足します。
キャリアに関連する用語が非常にたくさんあります。なじみがないものもあるかもしれません。
キャリアデザイン(設計)、キャリアプラン、キャリアパス、キャリアモデル、キャリアアップ、キャリアチェンジなどをそれぞれを簡単に説明します。
キャリアデザイン(Career Design)
キャリアデザインとは、キャリアを設計することをいいます。
たとえば、上の絵でAさんの場合には、営業担当から営業役員になっていく計画となっています。
これからの人生をどうするのかを考えることです。
キャリアビジョン(Career Vision)
キャリアビジョンという言葉もあります。これは将来的な目標を指します。
具体性も時間軸はさまざまですが、
- 5年後にはマネージャーになりたい
- 10年後には海外子会社の社長になりたい
- 事業全体を見る立場になりたい
- プロダクトの設計から開発、マネジメントまでできるようになりたい
などといったものです。
キャリアプラン(Career Plan)
キャリアプランとは将来の具体的な計画のことです。上にあるキャリアデザインをした結果、できる成果物ともいえます。
Aさんの場合には、営業担当から営業役員に上がっていくまでの営業リーダー・営業マネージャーと上がっていくという計画になっています。
一般的にキャリアプランというときには、転職や起業などを前提していることが多いです。
例:A社で営業担当として3年間経験を積んで、他社に移り、海外営業を経験するというようなものです。
キャリアパス(Career Path)
キャリアパスは、キャリアプランに近い部分もあります。
パス(=path)は経路という意味なので、キャリアの道筋という意味ではキャリアプランに近いです。
違いはキャリアプランといったときに、社外のことも含みますが、キャリアパスは社内で昇進や異動をする道筋を指します。
人事の人がよく使うイメージですね。
例:営業のキャリアパスは、昇進してマネージャーになるか営業経験を活かしてマーケティングに異動するなどがあります。
キャリアモデル(Career Model)
キャリアモデルは、具体的な誰かを指すケースと、企業内で共有されているような典型的なキャリアパスの例のことがあります。
前者は○○さんみたいになりたいというケースで、ロールモデルとも呼んだりもします。
後者は、営業に配属された人は、5年間プレーヤーとして働き、その後5年ほどリーダーとして後輩を育成し、次の5年でマネジメントをやります。
というようなものです。
キャリアアップ(Career Up)
キャリアアップはやや抽象的ですが、一般的により専門的な分野、高い地位、高い報酬を得ることを指します。
これは必ずしも転職とは限らず、今いる会社で昇進したり、業務範囲が広がったりしたときにも使えます。
「転職してキャリアアップしたい」といった使われ方をします。上の例ですと、Aさんは順調にキャリアアップしていますね。
キャリアチェンジ(Career Change)
キャリアチェンジとは、その名のとおりで、キャリアをチェンジ(変化する)ことです。
上のBさんのように、営業から経理に代わるといった、がらっと職種や業界が代わるものを指します。
厳密にいえば、転職も社内の異動もすべて変化ですが、基本的には転職して、今までとは大きく異なる仕事に就くことです。
さらに知っておきたいこと
キャリアの話はだれにでも身近ですが、あまり知識として流通することがないように思います。
就職を成功させるために、転職で給与を上げるためには、履歴書・職務経歴書の書き方など、表面的なノウハウはたくさんあります。
でもあなたがどうしたいかは成功者インタビューをたくさん見てもわからないことも多いのではないでしょうか。
まずは、自分なりにキャリアを考えて、自分の中での目標や価値観が見えてきてから転職エージェントなどとコミュニケーションを取りましょう。
彼らは、あなたがしたいことをどう実現するかをサポートしてくれます。
何を実現したいかはあなたの宿題なので、その前に済ませましょう。
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