営業にもロジックがある?『影響力の武器』を読んだ書評

皆さんは営業の本というとどんな本を思い浮かべるだろうか。

その多くは、著者がでかでかと表紙に載って、目を引くようなやや大げさなタイトルがつけられ、読んでみると他の人に活用できるかよくわからない個人的な体験談が書いてあるのではないだろうか。

営業を科学できるのか

最近よく言われることでもあるが、MBAでも営業はあまり扱わない。

1つには、MBAではMaster of Business Administration の略で、administration = 管理で営業はスコープ外だということ。

もう1つは、営業というものが極めて実践的な領域で座学に適しないからではないだろうか。

個人的に大前研一は好きだが、大前研一の営業の本を読んで、営業ができるようになると思えるだろうか。(大前研一と考える 営業学

一方で、僕は理論も勉強したかった。営業において高いパフォーマンスを発揮する人はどこの会社にもいるが、高いパフォーマンスの営業マンを生み出せる組織を作れる人がどれだけいるだろうか。

営業は多くの場合、再現性が無い。多産多死でできるやつはできるが、できないやつはできないというケースが非常に多い。

この本に書いているような内容を学ぶことで多少なりともそういう感覚的、ファジーな領域を再現性のあるものにできるかもしれない。

ベースとなる武器

引き金特徴

特定の状況に対し、決まった対応(認識や行動)をしてしまうこと。これを利用すると、簡単に人を誘導できる。

1.ヒューリスティック

高いもの=高いだけの理由がある良いもののような間違い。ブランド品などで高い価格をつけた方が売れるケースもある。

2.コントラストの原理

高い金額の後にその金額より低い金額を言われるとよりその金額が安いように感じるような認識。通常○○円が○○円。

影響力の6つの武器

1.返報性の法則

他社に何かを与えられたら自分も何かを返さなければならないという法則。

このルールには、3つの特徴がある。

  • 1.他の決定要因を退けるだけの強い力がある。
  • 2.望んでいないものにも適用される。
  • 3.最初の好意より大きな好意で返しがちである。

より強い効果を発揮するためには、相手が予期していないような驚きを伴う申し出をしたり、最初により大きなお願いをすることで2つ目のより小さなお願いを断りにくくする方法(ドアインザフェイス)がある。

2.コミットメントと一貫性

私たちはできるだけ一貫していると見られたいという法則。この原理は2つの要素から成り立っている。

  • 1.一貫していることで社会的評価を得られる。
  • 2.一貫していると自分の考えを改めたりする必要が無く、日々生きるのが楽。

まず、小さなことでもコミットさせることが重要。それにより自分の考えや行動が変わり、同じような言明にコミットしやすくなる。(フットインザドア)

これは前提が間違っていても有効であり続ける傾向がある。より強いコミットを求めるのであれば、厳しい試験を課したり、文章として書き留めさせたりするとより肯定的な態度を取るようになる。

3.社会的証明

私たちは行動や考えを決定する上で、他人の振る舞いを真似る傾向があるという法則。

不確実な状況において自信を持っている人の振る舞いや多くの人が取る行動を元に、自分の行動を決めている。

特に強い影響力を発揮するのは不確実性と類似性が高いときである。不確実性が高いとは、自分の専門外の分野で知識が少ないときやこれからの状況が不明確な場合などである。

類似性とは自分と似ている人の振る舞いをより真似しやすい傾向にあるということである。

4.好意

非常に当たり前だが、好意の持った人間の申し出は断れないという法則。好意を高める要因は大きく5つある。

1つは外見の魅力。魅力的な見た目の人は才能や知性を感じさせる傾向にある。(ハロー効果)

2つ目は類似性。自分と似ている人に好意を感じやすい。

3つ目は賛辞。基本的に人は褒められることが大好きだ。

4つ目が接触。人はよく会う人に好意を持ちがちだ。ただ、異人種間のように接触が逆効果になることもあり、そういった場合は協力を引き出すような共通の目標を作ることが有効である。

最後が連合である。有名人や魅力的な女性を使うことで、車や選挙の候補者をより魅力的に見せることができる。

5.権威

私たちはは上司や警察、医者など権威者の指示にはほとんど抗わないという法則。

権威者自体ではなく肩書き、服装、装飾品等のシンボルに反応しがちである。特に、自らにとってあえて不利な情報を伝えることで、より信用づけるやり方もある。

6.希少性

私たちは希少なもの及び希少になりそうな物に価値を認めるという法則。

特に、私たちはあるものを失うことを得ること以上に過大評価する。加えて、私たちは何かしらの自由を侵害されそうになると、その前よりもそのものに惹かれる傾向がある。(心理的リアクタンス)

ロミオとジュリエットなどがその典型例。期間限定や数量限定等も意思決定に強い影響を及ぼす。

最強のセールスマンは・・

僕はこの本を読んだときに一番にアジアの国々に行ったときのタクシーの運転手や物売りの人たちを思い出した。

  • 彼らは勝手に花を渡した上で、寄付を寄こせと言ったり(返報性)、
  • なんとか言質を取った上で誘導したり(一貫性)、
  • 日本人はみんな買うといったり(社会的証明)、
  • 仲良くなった上でだましたり(好意)、
  • 警察でさえだましてきたり(権威)、
  • ここでしか買えないといったり(希少性)、

ありとあらゆる手でお金を得ようとしていた。やはり本質的な原則は世界中で通用するということなのだろうか。

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