好きなことを仕事にすることの罠・好きを仕事にしなくてもいい考え方

何年か前の話ですが、「好きなことで、生きていく」というキャッチコピーでYoutuberがCMに出ていました。

彼らは今、好きなことで生きているのでしょうか。

ただ、こうした話は定期的に現れますし、自己啓発書でも好きなことをして生きようみたいな本はたくさんあります。

そのたびに、好きなことをした方がいいのかということに違和感を覚えます。

僕は全面的に反対というわけではないです。好きなことと、嫌いなことであれば、好きなことをした方がいいと思うんです。

でも、好きなことをしてうまくいかない人とかを見るわけです。特に起業しているとたくさん見ます。

ここ数年くらいで見たのは、インバウンド(訪日観光客)向けのビジネスをたくさん見ました。

若い人たちが多かったのですが、どう考えてもニーズがあるとは思えないことに取り組んでいる人たちがいました。

彼らは間違いなく、好きなことで生きていました。

失敗しても好きなことなら問題ないのでしょうか。

僕は最初の事業として旅行メディアをやっていました。旅行は大好きでしたが、うまくいかないと非常につらいです。そもそも続けられません。

これは実は起業家の間でもよく話題になります。

起業家は好きなことで起業をした方がいいのか

起業は大変だから自分の好きなことをした方が良いという考え方があります。実際、成功した起業家のインタビューでこのようなことを語られているのもよく目にします。

たとえば、確かにスティーブ・ジョブズは大成功しました。彼は間違いなく、自分の情熱を傾けられることに集中していた人だと思います。

一方で自分はどうしてもたまたまではないのかと考えてしまうところがあります。

彼が信じられないくらいの大成功を収めたのは、大好きなことに注力したからではなく、彼の興味・関心がパソコンやスマホといったその時代で最も成長した領域と一致していたからではないのかと考えてしまいます。

話としてきれいなのはわかります。でも、それがどうもきれいすぎると感じてしまいます。

本やインタビューで見る話があまりにもきれいすぎて、自分が実際に起業して見ている風景と同じものとは思えないからです。むしろ別世界のことなのではないかとさえ思います。

大好きな事業でもマーケットがないために、あきらめる人もたくさん見ました。競合が強いからあきらめる人もいました。法規制が原因で辞めた人もいます。

そして、ここからが重要なのですが、彼らがそこから方針転換して非常にうまくいくケースも見ます。

こうした方針転換をベンチャー(スタートアップ)ではバスケットボールのルールにもある、ピボットと言います。

ただ、ここでのピボットはサービスの一部機能にフォーカスしたり、メイン顧客を変更したりというレベルではありません。ほとんどは完全に違う事業を行っています。

ピボットというよりもトラベリングです。

従業員は増えます。関係者も増えます。顧客も喜びます。これは、二度目の事業で本当に好きなことをやったからでしょうか。

あれ、うまくいくことをやった方がよかったのでしょうか。

奇跡に期待しないために

大学のときに、起業家の人からNeed(社会が必要とする)、Want(やりたい)、Can(できる)ことをやろうと言われたのを覚えています。

最近もIkigai(生きがい)というチャートで、必要で、得意で、好きで、儲かることをやろうと書いてありました。

理想的だと思います。同時に、これが一致するのは奇跡なんじゃないかなと思いました。

あなたにはこれがすべて一致するものがすぐに思いつきますか?

社会が必要とするものが、自分の好きなものと一致しているのは素晴らしいと思うんです。

これが一致している人が大きな成果が期待でき、それが一致している人は大成功しやすいでしょう。ベストです。

こうした人たちは割合としては、少ないはずですが、大成功してしまうため、この人たちの話は拡散されます。当人たちもその成果から自分が正しいと思ってしまいます。

では、これを一致させることがすべての人に可能なのかというと途端に自信がありません。

そうした成功者の話を聞いた、普通の人たちはどうなるのでしょうか。もしかしたら自分の努力が足りないかもしれない、今やっていることが本当に好きではないのかもなどと考えてしまいます。

この好きなことを仕事にという信仰は、誰かの選択肢を奪っているのではないかと思ってしまいます。

好きになれそうで十分

もちろん、大嫌いなことに取り組めと言いたいわけではないです。好きではないことを続けるのもつらいのは事実です。

ただ、それをはじめた瞬間から24時間ずっと考えていても苦ではない、人生をかけて成し遂げたいと思えなくてもいいのではないかと思います。

今はまだわからないけど、好きになれそうくらいで十分ではないでしょうか。

たとえば、社会のニーズから始まって、自分がその中で好きになれるものを選んでもよいのではないかと思っています。

両方が完全にマッチするなんて奇跡的な確率に期待するよりも、自分の好きを少しフレキシブルに考えた方が幸せになる方が多いんじゃないかと思っているわけです。

だいたい、一生懸命取り組んで、成長していれば、だいたいの事業は好きになります。

アメリカでYcombinatorという有名なシードアクセラレーター(起業家の養成所)があります。

その設立者で投資家としても非常に有名なポール・グレアムも、実は同じようなことを言っています。

クールなもので、できるだけ稼ごうという考えでなく、稼げるもので、できるだけクールなものに取り組むべきだ。

これは起業の例ですが、仕事全般にいえることかと思います。自分が好きなことがたまたま儲かる可能性なんてそんなに高くないでしょう。

「○○でなくてはいけない」なんてことは実際はほとんどありません。

自分の一番の好きを仕事にしなくてもいいのではないでしょうか。

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