世の中にはある程度、投入した努力と結果が比例し、予測がしやすい正規分布的な分野があります。
一方で、起業のようにベキ分布的なそれとは全く異なる振る舞いをする分野があります。
これは映画や漫画などのコンテンツ産業だったり、お笑い芸人のような職種とも似ています。
一部の人だけが圧倒的にパフォーマンスを発揮し、それ以外はほとんど差のない、絶望的に低いパフォーマンスに留まります。
この全体像は変わりませんが、その中でもがく1人として少しでも成功確率を上げる方法を日々考えているので、それを書いていきます。
目次
1つ目のプランはほとんど成功しない
この単位は会社であったり、プランであったり、さまざまありますが、いずれにせよ、1つ目で大当たりということは非常に少ないです。
それはスティーブ・ジョブズやUberの前CEOのトラヴィスであったり(彼の失敗歴)、非常に有名な人だけでなくその他の起業家の話を聞いても少なくとも数回、多ければもっとプランを変更しています。
それは、その前の会社であったり、学生時代の起業で失敗したりと様々です。
Gumiのように起業してから3回ピボットしている例もあります。
感覚的には10回は多すぎるものの、4回前後くらいは全然ありうるというレベルです。
これを勘違いして多くの起業家は1回目のビジネスが失敗したときに絶望的な気分になりますが、実はほとんどの起業家が通っている道です。
ここの正しい情報があまり流通しないのが悩ましいところです。
たとえ、流通しても大成功した起業家の美化された失敗話として公開されたり、あまり語られなかったりすることで多くの人の耳には入りません。
20%前後の確率をキープして数回トライする
下で簡単に少なくとも1回、成功する確率を計算していますが、トライする回数が最大でも5,6回だと想定すると少なくとも1回あたり15%程度の成功率をキープしたいという計算になります。
(現実には15%を5回というより、15%,18%,20%…と上がっていくのでここの数字よりは良くなります)
一般的にだいたい3,4回目で成功しているので、うまくいく人は20%前後はキープしているのかなと思います。
現実を見ると圧倒的に成功する可能性の方が低いので、ここでの計算は甘いようにも感じますが、少なくとも1回目で大成功するという夢から目を覚ますには十分な数字かと思います。
悩ましいのは、あまりにも成功確率が高いものはもはやスタートアップとは言えないので、いわゆる大成功(今の日本だと100億以上のExitなど)を目指すとここは必然的に下がってくるということでしょうか。
ジェフ・ペゾスは自社の成功確率を30%と見ていたと言われるので、それくらいが実際のところMAXになるのかと思います。
では、次に施行回数と成功確率をそれぞれ上げる方法を見ていきましょう。
施行回数はお金と気持ちでコントロール
施行は一般的には、お金(HP)と気持ち(MP)のどちらかが尽きた時点で終了となります。
つまり、Maxの施行回数はお金と気持ちに左右されます。
したがって、施行回数を増やすには、お金と気持ちをできるだけ節約し、ときには回復しながら仕事をしていく必要があります。
今の日本においてはお金が余りがちと言われているので、気持ちの方が重要かもしれません。
大事なお金の守り方
節約する
まずは、お金を節約すること。一般的に起業家が行っていることは生活コストを下げることでしょうか。
元Paypal創業者で有名な投資家のピーター・ティールは起業家の給料の低さと成功確率は比例すると言っていたりします。
他にも意外と高くない起業家の給料の統計があったり、周りを見てもカップラーメンで生活できそうな人が多いように思います。
また、オフィスをシェアオフィスにしたり、自宅兼オフィスにしたり、クラウドソーシングなどを活用し、必要以上の社員を雇わないことなど工夫しているケースが多いです。
検証もせずに多くのマーケティングコストを費やしたり、開発を外注して多大なコストが発生するというような失敗はもう最近ではないかと思いますが、リーン・スタートアップや起業の科学などを読めば、そうした失敗も防げるかと思います。
稼ぐ・調達する
当たり前ですが、もう1つはお金を稼ぐことです。
ポール・グレアムもデフォルトで死んでいるのか・生きているのかが重要だと言っています。
要は、自分たちのお金が尽きる前に黒字化できるかどうかということです。
利益の多寡は問題でなく、ラーメン代(起業家の生活費分)と呼ばれることもあります。
これは資金調達をしなくても大丈夫という点において重要です。
今のように調達環境が良いとマネタイズの重要性が見過ごされているケースも多いように感じます。
当たり前ですが、黒字化することにより資金調達は容易になるので、二重に重要になります。
ビジネスにもよりますが、Gumiのように赤字でもどんどん調達しながら進むケースとエウレカのように受託事業を立ち上げて、新規サービスを行うという戦略もあります。
大事な気持ちの守り方
起業家は気持ちが揺れ動きます。サラリーマンのときの数十倍くらいは変動が大きいです。
その対策は個人差が大きいですが、比較的共通しているものを取り上げます。
大打撃を防ぐ
まず、致命的な大打撃を受けないようにしましょう。
多くの取り返しのつかない間違いは、一般化されて共有されています。
資本政策の失敗や共同創業者との仲たがいや早すぎるスケールなどの基本的なトピックを抑えて失敗しないようにしましょう。
健全な人間関係
また、人間関係も重要です。特に創業期は自分にポジティブな人材を周りに置きましょう。
ネガティブな人は置かなくても必要以上のフィードバックをエンジェル・投資家・顧客・意地悪な知り合いからもらうことができるので十分です。
可能な限り、信頼できる共同創業者、メンターを置き、元気に経営しましょう。
自分のパターン
3つ目に自分なりのパターンやルーティンを見つけるケースも有効です。
定期的に飲み会に行ったり、引きこもったり、本を読んだり、運動をしたり、自分なりの生活パターンを踏襲している起業家も多いです。このトピックは前にも似たような内容で、記事を書いたので、興味がある方はこちらも参照ください。
参考:【しなないために】MP(やる気)を守って生存率を上げる起業の考え方
成功確率を上げる
成功確率の因数分解やモデル化は恐ろしく困難なので、日々その確率と向き合っている投資家やエンジェルの人の意見なども参考に考察していきます。
他にも一般的に言われている成功確率を上げる方法を伝聞や自分の経験をベースに書いていきます。
参考)投資家の声
シード期(ほとんどのスタートアップが初期に死ぬので)の投資件数が多かったり、業界で有名な投資家の発言を集めました。
多いのは、起業家(気合い、地頭、いい奴)と市場選択(サイズやタイミング)という部分でしょうか。大きなマーケットに挑むイケている起業家に投資したいようです。
- 元エウレカ赤坂さん:起業家が諦めないかどうか
- 元コーチ・ユナイテッド有安さん:市場選択と起業家の気合い・覚悟・柔軟性・学ぶ力
- 元コロプラ千葉さん:自分がやらなくてはいけない理由がある、いいやつである
- Eastventures松山さん:事業領域・プロダクト・人物
- ANRI代表佐俣さん:起業家の頭の良さと熱量
- インキュベイトファンド和田さん:時価総額1,000億円を目指せそうなテーマ・実現できそうな起業家
- BEENEXT前田ヒロさん:経営者とチームが考え抜けるか、学習できるか、勇気があるか、負けん気があるか、市場のサイズが大きいか
大きなマーケットで自分が頑張れる領域を選びましょう
投資の得やすさ=成功確率ではありませんが、上記のアドバイスを受けるとマーケットや自分が情熱を得られる領域にすることが重要です。(地頭やいい奴は急に変わらないと思うので)
適切なサポーターを付けましょう
メンターやエンジェル投資家など、実際に起業に関しての正しい知識や経験がある人にアドバイスを受けましょう。
特に若い起業家の場合にはよくわからないおじさんや起業経験のない社会人、家族の意見を聞くケースがあるので、間違った人にアドバイスを受けないことも重要です。
彼らのアドバイスで致命的な失敗を避けたり、効率よく事業を進められているケースを非常によく目にします。
適切なコミュニティ
上記に関連しますが、本当に重要な情報はオフラインだったり、クローズドでしか流通しないこともあります。
スタートアップは村社会と揶揄されることもありますが、村に入ることで有用な情報を得ることができます。
また、横のつながりも自分がつまづいたときやちょっとしたヒアリングをしたいときに非常に助かります。
成功しそうな人の多いイケているコミュニティに入ることで成功確率は上がります。
スタートアップの知識・経験を得ましょう
ポールグレアムのエッセイに『スタートアップを始めるための十分な経験がないなら、スタートアップを始めるべきなのだ』という興味深い言葉があります。
要は、早く始めた方がいずれにせよ早く学べるということですが、せっかく典型的な失敗やスタートアップにふさわしいアプローチが広まってきているので、概論だけでも抑えるのは悪くないと思っています。
おすすめの本は下記のもので、リーン的な概念や仮説検証の考え方などを抑えつつ、フェーズごとにスタートアップ関連の知識が一通り抑えられるので、読んで損は無いかと思います。
他にもスタートアップのイベントがあれば、出てもいいかもしれません。
もちろん、スタートアップイベントのオタクになってしまわないように気をつけてください。
たくさん働きましょう
これは多くの成功した起業家が言うところなので信じてたくさん働きましょう。
たまに勘違いしている人がいますが、徹夜をするといった意味ではなく、短期ではなく継続可能な形で働ける仕組みを作ることが重要です。
質をある程度キープできる中で最大の時間を使うことで成功確率を上げていきましょう。
それでも成功しないかもしれない
成功者は上記を満たしているケースもありますが、問題なのは失敗している人でも上記を満たした人はたくさんいるということです。
元々、ほとんどが失敗するようなものです。では、失敗した人は不幸になっているのでしょうか。
以前、起業をしていて今は会社で働く友人が数人います。
彼らはそのときのことを後悔しているかというと後悔しているケースは非常に少ないです。(もう一度やりたくないというのはよくありますが)
その理由を考えた時に、後悔できないほど全力でその物事に取り組んでいることが大きいかと思います。
皆さんでも学生時代の部活や受験で全力を尽くして結果が出なかった人もあると思います。
特に部活であれば、日本一になれる人なんて数えるほどかと思います。
その時の結果を理由に、その時期のことを後悔している人がどれだけいるでしょうか。
失敗しても大丈夫
仮にうまくいかなくとも、幸いなことにあらゆる企業から起業家的人材の需要は非常に高いです。
僕の登録している転職サイトにも多くのメッセージが届きます。それはスタートアップから大企業から外資企業から様々です。
どうやら起業に失敗しても選択肢が大幅に減る時代では無さそうです。
既に起業している人は安心して全力を尽くし、成功確率を上げていきましょう!