【書評】人の行動にも理論がある、一歩上の知識のための『組織行動の考え方』

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組織行動の考え方―ひとを活かし組織力を高める9つのキーコンセプト (一橋ビジネスレビューブックス)

コーチングの本を読んでいて、久々にアカデミックな本を読んでみたくなって読んだ本。読み進めると、大学時代の授業に戻ったような感覚になる。もっと色んなことを勉強しなきゃと思わせてくれると共に、最近の流行の本を比べると若干の周りくどさも感じたり。理論的に興味深い領域もあれば、やはり扱うのが難しい領域からか物足りない感が強いトピックもあるのは否めない。アカデミックなアプローチの優位性とその限界を感じさせる。大学のときに、経営学の教授が難しいのは理論的である一方で、実務者(経営者)からすると、どう使えるのかという実践性が求められるということを言っていた。そんなことさえ、好意的に思えるのは学問から離れすぎているせいなのかと若干の反省も感じるが。

実務をやっている人ならわかると思うが、正しい戦略を立てることと同じくらい、人を正しく扱って物事を成し遂げるのは難しい。多くのマネジメント本が出版されている中で個別の現象に関して書いてある本はたくさんあるが、理論的に体系だってまとまっている本はほとんど無い。そこで、理論を学ぶことで幾分、再現性の高い手法を学ぶと共に、今後ケースとして学んでいく多くの人に関連するマネジメント経験を体系立てることに役立てばと思う。

組織行動の重要性と基礎的な理論

組織行動とは厳密に言うと、組織の中の人間行動だという書き出しで始まっている。経営戦略がmanaging businessだとすると、組織行動がmanaging peopleである。人がどう動くかということにフォーカスが当たる。理論は昔から研究されているものがいくつかある。ツァイガルニーク効果という理論は人は緊張によって動くと論じた。何らかの「未達成の課題」に向き合ったときに、緊張が生じてその緊張をとくために動き、課題が解決されると緊張がとけると共に、要求水準が上がり、新しい未達成の課題への欲求が生じるとのことだ。他にも有名なのはマズローの欲求階層理論やマクレガーのX理論・Y理論だろうか。その後、環境要因も考慮に入れ、唯一最善の方法がなく、環境に応じてふさわしいマネジメントがあるというコンティンジェンシー理論が生まれた。

コンピテンシーとは何か

興味深いのはコンピテンシーはスキルではなく、環境適応的・実践的な側面があるという点だ。つまり、営業スキルというものがあったとして、それは実際に営業の場において発揮され、その場で実績を上げるものではならないということだ。会社でよく行われるコンピテンシー・モデルの作り方も面白い。ハイパフォーマーとそうでない人を比較するリサーチベース、今後の経営ビジョンや戦略の達成のために必要な能力を想定する戦略ベース、また、GEのように価値観や文化などの理念を行動指針に落とし込む、価値ベースのアプローチなど様々だ。また、コンピテンシーは学習できるものと考えられることが多く、その方法は、経験による学習、モデリング(先輩やメンター)による学習、概念化(振り返りや研修)による学習によって学ぶことができるとのこと。自己の体験や他者の観察を自分なりに落とし込み、暗黙知かしてからそれを人に伝えられるように形式知かする。この獲得にはモチベーションが大きく関連する。

モチベーションに関してはよくわからない

ということがひたすら書いてある。理論としては、欲求階層説や動機付け・衛生理論(モチベーションが上がる要因と下がる要因は異なる)、公平理論(不公平を是正する強いモチベーションが働く)、期待理論(期待値を計算し、合理的に意思決定する)、職務特性理論(職務の特性でモチベーションが変わる)など多くの例が挙げられている。最終的には目標設定理論(目標による動機付け)でもプロジェクトXの人達の動機付けは説明できないとして、夢理論というものを提唱している。この章のお粗末感は強く、実践からほど遠い。

キャリアデザインには二通りしかない

最初にある程度大きな絵を書くものと、プロセスを重視し、徐々に創っていくものという2通りあると書いている。デザインの概念を参考に対比しながら書いてあるが、非常にわかりづらく、結局、ありがちな目標設定型と創発的なキャリア(計画された偶発性)のような結論になっているのは残念だ。

人事評価はどうあるべきか

人事評価は信頼性と尺度、絶対評価・相対評価か行動を見るか、人物を見るか、長期か短期かといった点を論じている。信頼性や尺度に関しては、BARSやBOSといったツールがあり、ある程度信頼性を高める術はでてきているとのこと。(初めて聞いたのだが、有名なのだろうか・・)また、相対軸で見るのか絶対軸で見るのかというのは東洋と西洋に絡めた点で面白かった。東洋では、職務そのものよりも人物を重視しがちで、相対評価で計りやすくなりがちだが、西洋の場合には人物と能力をしっかりわけがちなので評価基準を明確化し、それ毎の絶対評価の方があったりする。

リーダーシップとはどうあるべきか

リーダーシップに関しては一般的な内容となっていた。リーダーシップは先天的なもので、それを発揮できる人を観察する特性理論(≒偉人論)からリーダーシップは行動により規定され、誰でも発揮できるという行動理論、その後は状況に応じて発揮すべきコンティンジェンシー理論で、最後に今求められている変革型リーダーシップに関して触れられている。興味深かった点は「業務や課題の軸」と「人間関係」というたったの二軸であらゆる研究でリーダーシップが説明されるということだった。

以上、全てには触れなかったが、改めて読み終えて思うのは、理論としてそれぞれの領域がどこまで進んでいるのかがわかることや、自分の実体験を裏付ける理論があるという点では興味深い。一方で、そこから実務に対する示唆を得るには少し理論に寄りすぎていることは否めない。また、この分野に関してはまだあまり研究が進んでいないことを実感した。僕が大学で勉強していたのはもう5年以上前だが、そこの内容からそこまでアップデートも無いように思う。普段何気なく、使っているコンピテンシーという言葉や現在のトレンドが歴史的にどのように生まれてきているのかは面白いが教養としてのもので、ビジネスマンがこういったことに時間を使うのはなかなか難しいかもしれない。

Mohi@Day14

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