インドネシアのスタートアップシーンを見て思ったこと

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インドネシアのスタートアップイベントに出たり、現地のスタートアップの人たちと話して感じていることのまとめ。インドネシア・日本・アメリカの事情がそれぞれ異なっていて、やはり三つくらいで比較できると差がはっきりするので、面白い。多くのスタートアップやビジネスの議論において、日本特有の事象やシリコンバレー特有の事象を過度に一般化したり、逆にガラパコスとして局所化しているケースも多いように感じていたので。

1.歴史は浅いが、凄まじい伸び

生態系ができていくにあたって、よく起業⇒Exitのようなサイクルが何周しているかという言い方がされる。インドネシアも日本同様にスタートアップのエコシステムがまだ未成熟で、現状はバブルで、向こう2~3年でだいたい潰れるんじゃないかというような人も多い。日本での第一世代がSoftbank(1981創業)で、第二世代が楽天(1997)とかサイバー(1998)だとすると、第三世代はじげん(2006)とかリブセンス(2006)で、第4世代はフリークアウト(2010)、Gunosy(2012)、メルカリ(2013)という感じだろうか。一方のインドネシアはTokopedia(2009創業)、Gojek(2010)、Traveloka(2012創業)とここ2010年前後にできたスタートアップで既に3社がUnicorn水準に来ているという凄まじい成長を見せている。

2.海外経験・外銀出身のような経歴ピカピカ系人材が多い

日本と比較したときの大きな違いが、日本であれば、大企業に行くような人材がスタートアップで働いたり、ケースが多い。そもそも海外に行く人材が多いのは、教育水準のレベルが国内と海外で大きく違うからだったり、海外で教育を受けたことが高く売れることが大きな要因と思われる。日本だとあまり高く売れないどころか、企業によってはネガティブに取られることさえある。そして、この人たちがVCからの大量の資金を受けたり、受けているスタートアップで働いたりすることでスタートアップ人材が育っている。もう1つこの動きに拍車がかかっているのは、国としての経済成長・規模が大きくなってきており、ポテンシャルが大きいため。たぶん今までは戻ってこなかったであろう人たちが国に戻ってきている例も多い。(帰ってきた人たちはみんなOpportunityと言っていた)極端な例では、幼少期からの20年間以上を他国で過ごし、インドネシア語があまり得意じゃない人が2年前から帰ってきてスタートアップをやっているというようなこともあった。

3.スタートアップという選択肢に十分なメリットがある

よく日本で起業が少ない理由の1つに起業家精神が低いということが言われているが、それ以外の部分も大きいように感じた。例えば、前述のようにスタートアップの給料が高かったりして、TravelokaやTokopediaなどを筆頭に多額の資金で人を集めている会社があり、待遇がかなり良かったりする。(他社から2~3倍の給料で引き抜かれたり)日本でも同じようにSoftbankや楽天みたいな会社が1,000万円以上の給料でガンガン採用を進めればもっと人は増えると思う。また、インドネシア(というか多くの日本以外の国)では2~3年くらいの期間で会社を移ることは特に問題とされないので、そのことも挑戦のハードルを下げているように思う。後は日本ほど、安定して終身雇用みたいな強烈な競合がいないのも非常に大きいかもしれない。満足度の高い環境でも地元に帰りたいということで退職する人たちの話もよく聞く。

4.ほぼ全員、英語喋れる

先週末にStartupのイベントに出たが、僕がインドネシア語が喋れないとわかるとみんな英語でコミュニケーションが取れる。人によってレベルは異なるが、みんなビジネスプランを作るくらいのレベルであれば、問題なく英語でコミュニケーションができる。日本でいうと、ビジネスレベルの英語は大学卒の大半の人が持っているようだ。大学での教育が英語だったりということもあるが、英語が話せることによって明確なアップサイド(150~200%の給料アップ)などがあるのは大きいかもしれない。日本だと英語ができても給料はあまり上がるイメージはない。(現に帰国子女なのに全く英語を使わない仕事をしている友人も多い)

5.てかみんな若い

日本でも近年、高校生が起業したりと低年齢化がすごいが、こちらはそもそも若い人が多いし、前述したように日本のようにスタートアップの待遇が悪くない(給料は下がるより上がる)ので、彼らの有望なオプションになっている。日本のように2~3年で転職することがネガティブとされていないことなども影響しているように思う。こう考えると人口動態や未だに根強い終身雇用的な価値観(長く働くのはいいこと)はかなりダイレクトにスタートアップの人材調達に影響しているように感じる。

6.コミュニティは日本同様かそれ以上に狭い

日本もスタートアップイベントというとそこまで多くないが、ここ数年にかなり増えてきたように思う。それに比べるとまだこちらでは限られた範囲で流通されている印象を持つ。日本でもそうだが、誰かとつながりたいと思った時につながるハードルはかなり低く、一人捕まえられれば、その人から次々に紹介してもらうイメージはかなりつく。

7.スタートアップの質も悪くはない

ここもかなり景況に左右される領域なのだが、日本であっても、インドネシアであっても、アメリカであっても何でこんなところに投資するのだろうという事業はよく目にする。日本では、チャットボット系やインバウンド系、インドネシアはECだったり、オリジナルの商品だったり、アメリカもコンセプトだけのヘルスケア系やUberの何々版みたいなのはよくみる。他国に比べてインドネシアが著しく悪いとは現状感じない。(日本もよくわからない学生のアイディアにシードで数千万入るし)ただ、日本と比較して出口のないシリーズAみたいなのは日本より多いかもしれない。(日本はKDDIとかが買ってくれる)

8.Fintechが大人気

Fintech自体は非常にバズワードっぽいのであまり好きじゃないのだが、paymentだったり、lendingだったりみたいなところはかなりホットになっている。そもそも銀行引き落としの決済方法が無かったり、クレカはほとんど持っていなかったりと金融面ではあまり進んでいるとは言えない状況なので、ここの注目度は非常に高い。スタートアップの人でFintechの話ばかりしている人も多い

9.B向けも増加中だが、Saasはまだまだこれから

Saasはありなんじゃないかと思ってVCの人たちにも話を聞いたが、現状うまくいっているところは少なく教育段階という話。もう少しリテラシーが上がっていかないと、日本のようにFreeeだったり、SmartHRだったり、ATSだったりというようなところは盛り上がっていかなそうな印象。会社で働いている人達に聞いてもデファクトスタンダードになっているようなものはなさそうだった。

10.toCはtoCでなかなか大変

toCはtoCで注目を集めている領域というと、Fintech、配車アプリ(もはや総合格闘技的だけど)、ECだったり、あまり短期的に利益を狙いに行くという感じでもないというのが肌感。そもそもまだ1人当たりGDPが4,000$とかなので、これがもっと7,000~8,000$とかになるとだいぶゲームの課金だったり、余剰資金が増えるとだいぶ変わってくるんだろうなと思う今日この頃。

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